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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

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(5点満点中3.97点)
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ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

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タイトルに、bloodに込められた意味

採点:
(5点満点中4点)

投稿日時:2008/08/31 16:52:08 投稿者:spam_spam_egg_spamさん

役立ち度:21

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spam_spam_egg_spamさん

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  • ・悲しい
  • ・絶望的

 主人公の石油王ダニエル・プレインビューを演じるダニエル・ディ・ルイスと、若きカリスマ牧師イーライ・サンデーを演じるポール・ダノ、この2人の演技にテーマすべてが集約されている映画だ。映画のプロットは、石油採掘を巡る一人の男の物語。彼と周りの人物がどのようにかかわってくるか。先の読めない展開と、ディルイスとダノの演技にどんどん引き込まれていった。

 私が注目したのは、なぜタイトルがThere will be blood、石油なのになぜ血なのかということ。映画を見ながら、また観賞後にいろいろ考え、調べてみた。bloodには複数の意味が込められている、すべての出来事にbloodが関わってくる、ということに気付いた。

 bloodその1=流血。
 石油採掘には多くの犠牲があった。利権を巡り、血が流れることもあった。特に映画の後半、血なまぐさい場面は登場する。私は当初、これが最も強い意味かと思ったが、観賞中の印象はノー。むしろ、カムフラージュとなっている気がする。

 bloodその2=血の力、すなわち洗礼。主(神〉より受ける血。
 パイプライン建設のために、イーライの宗派の洗礼を受けることを要求されるプレインビュー。しかしその場で「私は罪人(sinner)。私は子どもを見捨てた」と叫ばされる。その屈辱的な行いは、彼の哲学からは許されるものではないだろう。賛美歌There is power in the bloodがバックに流れる。「あなたは悪に勝利したいか?その血には素晴らしい力がある。」と歌われる。神など信じないプレインビューが、勝利したいためだけにthe power in the bloodを受け入れる。彼は自らの利益のためなら、信仰も洗礼までも道具にする。

 bloodその3=血縁。
 誰も信じない主人公プレインビュー、信じるのは血のつながり、family。自分の息子のみを頼りにする。生き別れした弟をすぐにパートナーに引き入れる心境は、血のつながりしか信じない彼の主義を明確に表している。
 ところが、エンディング近くでどんでん返しが待っていた。独立を願う息子に「お前は俺の子ではない、血はつながっていない」。この台詞の英語は、You have none of me in you. bloodとは一言もいっていない。一つ目の意味は完全なトリックの予感。

 しかし、さらにもう一つのエンディングが待っていた。イーライの登場だった。
 you have none of me in you.と、言ってはならない台詞を息子(養子)に言ってしまったプレインビュー。孤独しか残らぬ彼。そこへ自分の宣教に限界を感じたイーライが現れ、ビジネスパートナーを申し出る。プレインビューは洗礼の時に受けた屈辱を「私は偽預言者だ」と叫ばせるという「お返し」をする。こともあろうにプレインビューを「ブラザー」と呼んでしまったイーライ。血縁からの孤独感に自暴自棄となったプレインビューに、イーライも言ってはならない一言「ブラザー」をも言ってしまった。イーライを叩くことで、自分の道も断った主人公の最後の台詞は I'm finished 「俺は終わったよ」。

 映画鑑賞直後に調べてみた。There will be bloodという言い回しは、旧約聖書の出エジプト記にある「10の災い」から引用されていると知った。神ヤハウェが、エジプトのファラオ(王)の圧制からイスラエル民を助けるため、エジプトに災いを与えようと、弟子のモーゼにさせたことが10の災い。その一つが、「お前の棍棒を手にしなさい。それでエジプトの水の表面を叩きなさい。川、水路、池、すべての湖は血に変わるだろう。エジプト全土で、血に変わるのだ。(There will be blood everywhere in Egypt.) 」(拙訳) エジプトの生活を支えるナイル川を、「死の川」にしてしまうことで、エジプトへ打撃を与える。
 ここにもタイトルのbloodの意味が隠されているのだろう。
 bloodその4=死をもたらすものの象徴。
 プレインビューとイーライ、神への信仰という点では明らかに対極である。神はおろか、周りの者は信じず、1人でことをすすめるプレインビューは間違いなくファラオだ。しかしイーライがモーゼである、ということではない。イーライの宗派は本流とは違うThird Revelation(第3の黙示)というものであり、人々を支配下に置くことを目的とする点では、プレインビューと共通なのだ。ならば2人とも圧制をしたファラオなのではないか。彼らは、それぞれの組織(社会)で、神により周りの水をすべて血に変えられてしまい、生きるすべを断たれるのだ。イーライは衝撃的なラストシーンで、自らの偽善さをプレインビューによりあばかれてしまう。その瞬間、2人は同じ位置に立ったことを認識したはずだ。

 イーライの遺体から静かにbloodが流れるラストシーン。そしてI'm finishedの台詞。bloodを巡る様々な糸が切れたような、印象的な映像だった。

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