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インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

総合:
(5点満点中3.39点)
3.39

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インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

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映像表現者のスタイルを保護する立場から

採点:
(5点満点中4点)

投稿日時:2008/06/15 08:39:52 投稿者:ai_saotome_aiさん

役立ち度:170

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ai_saotome_aiさん

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  • ・楽しい
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  • ・コミカル

「宇宙人の登場でドン引きになった」
「核兵器の表現についてがっかり」
という批判があるようです。
(前列に座っていたお客さんの発言を耳にしたのですが)
映画人の端くれとして
「何故そう感じる?もしかして…こういうこと?」と
杞憂する気持ちに従って久々にペンを執ることにしました。

まず、冒頭でエリア51を示唆するセット、
インディたちの会話にロズウェルという単語が埋め込まれていること、
そして袋から垣間見える磁力を帯びた死体…などから
開始10分までに「宇宙人ミステリーがモチーフ」であるとバンバン布石が打たれます。
この時点で今回は「さては宇宙人来るな」と誰でも予想できるように設計されています。
とても親切な作りで、好感が持てるシナリオです。ただし

☆宇宙人が現れるという露骨な映像表現は認知しやすい
★ロズウェルや51、砂漠の米軍基地というキーワードは認知しづらい

のかもしれません。(ここが今回の論点になります)

もしこの映画が
何かとんでもない陰謀がありそうに煽り、人間の所業かと予想させておいて
実は宇宙人の仕業でしたと飛躍して逃げたのであれば
私も怒るところですが_そうではありません。
最初から「宇宙人いくよー」と連呼してくれている映画でした。
そんな布石を打っておいて、むしろ宇宙人を出してくれないと
怪獣が出そうに煽って出してくれなかった怪獣映画にならないとも限らない。
それこそ収まりがつかない映画です。
そういった素直な映画を愚直に見せてくれること。
これはカルトではないファミリー・ムービーには大切なことです。

次に、核兵器に吹き飛ばされてシャワーで身体を磨かれるインディについてですが
ネバダや悪名高いビキニ環礁での水爆実験をせっせと実施した
1950年代当時の冷戦下のアメリカを物語り、それを痛烈に皮肉る完璧な映画表現でした。
インディは股間をデッキブラシで洗おうとする作業員の手を持ってやめさせますが
これを「皮肉」といわずして何でしょうか。笑ってしまいました。
そして、後にロシアの悪党超能力科学者と我らがインディが問答する中で
原爆開発者であるオッペンハイマーの発言が引用されます。
「我は死なり。世界の破壊者なり」
彼は自らの過ちに苦しみ「反核兵器」運動に身を投じた人でした。
冷戦吹き荒れる時代のなか、インディと同じアカ狩りにあいます。
生涯にわたりFBIの監視下に置かれたオッペンハイマーとインディが
同じ目にあう、つまり危険分子として見られていた、というストーリーになっています。
つまり映画の作り手は当時の冷戦下のアメリカ=ロシアと同等=悪、
インディ=善ととらまえているわけです。ただし

☆ 水爆が爆発するという露骨な映像表現は認知しやすい
★ オッペンハイマー発言の引用やFBIアカ狩りへの反発は認知しづらい

のかもしれません。
おおらかに言えば「いい映画か悪い映画か、判断するのは観客だ」という話ではありますが、
あまりやすやすと「わかるひとにはわかる」で片付けたくありません。
というのも、「悪を悪らしく描くために露骨な映像表現をする。そのために水爆を映像化する」
であるはずが
「水爆を推奨する表現」のように受け取られるのだとしたら
多くの映画表現者が(殺人事件の犯人を通じて悪を描くといった)
コントラストを用いた表現手法を奪われてしまうことになります。

そして、映画前段の水爆表現に対し
中盤にオッペンハイマーの発言を持ち出し、
原水爆への嫌悪を表現しているにも関わらず
二つの表現の関係性を無視されているとしたら。

あるいは宇宙人ミステリーの表現において、
布石を打っておきながら享受してもらえず
布石を回収する部分だけ反応され、批評されているのだとしたら。

…由々しきことです。

映画表現者は常にこういった「布石と回収」の関係性を意識し
脚本開発に真摯に取り組んでいます。
では、ルーカスやスピルバーグが
観客のレベルに合わせられなかった
理解不能な布石と回収を連発した
ボンクラコンビだったと結論づけるべきなのでしょうか。

インディ・ジョーンズの脚本スタッフは(異論あるでしょうが)
現役の映画表現者としては経験値において世界最高水準にあると思います。
となると、私は受け手側に何か深刻な課題があるように思えてなりません。
「視覚的に露骨な表現に対し、時間軸を隔てた前後の関係まで理解しようとせず
自分の経験値や主義主張と短絡しすぎるのではないか」
ということです。
露骨な映像表現が価値観とショートしやすいことについて
理解を示さないわけではありませんが
映画は2時間なりの流れで文脈を構築する芸術です。

それなりの構えを持って、表現者たちを見守ってほしいものです。
私からのお願いです。

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