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シッコ

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(5点満点中4.16点)
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シッコ

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医療制度は国家の責任で行われるべきもの

採点:
(5点満点中5点)

投稿日時:2008/08/19 19:25:32 投稿者:spam_spam_egg_spamさん

役立ち度:18

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spam_spam_egg_spamさん

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 マイケル・ムーア監督は確信犯である。取材が始まる前から、結論も目的も決まっている。納得しない人は、始めから寄せ付ける気が無い。
 この映画を、良質なドキュメンタリーと言うには少し抵抗がある。ドキュメンタリーとは、ある出来事に関してミクロの視点で取材を重ね、客観的事実を積み重ねていくことでその事象の本質を探り、問題点を浮かび上がらせ、完成した作品である。しかし、ムーア監督は、ある出来事に関して、編者の考えを立証するために取材を重ね、裏付けとなる事実・証拠を積み重ねていく。それも徹底的に被害者・弱者・非権力者の立場にたって。逆の立場の意見は紹介こそするけれど(反論するチャンスは与えるけれど)、必ず再反論する映像を再度流す。
 だから、ドキュメンタリーの手法をとってはいるが、自分の主張を強烈にアピールする映画となっている。それゆえ、彼の意見に賛同できない人にとっては、彼の手法は卑怯な方法に見える。逆に、賛同できる人には、溜飲の下がる思いで鑑賞できる。

 ならば、私はどうか。
 賛同する人間である。弱者の立場を伝えること、体制に対して批判的精神を持つことは、ジャーナリズムの本質であると考えるからだ。
 ムーア監督は始めからアメリカの医療制度には問題があり、医者と保険会社が完全にグルであると勘ぐって、取材をしている。保険がおりないために高額な手術代が払えず、事故で切断してしまった指が元に戻らなかった男性の話、過去のわずかな病歴(といえないほどものも)を申告しなかったとして保険金の支払いを拒否された女性の話など、あり得る話だなとは思った。しかし、保険会社に有利な診断をする医者に報償金が払われるシステムには驚愕した。さらに、同時テロ911のボランティアの人たちが、後遺症を持ちながらもアメリカの医療システムでは救済されないという話は衝撃的だった。追い討ちをかけるように、アメリカが批判するキューバでは、必要な医療が必要な時に受けられるという事実が知らされる。キューバだけでなく、イギリス、フランスの医療制度もアメリカとは比べ物にならないほど充実している。イギリスでは、サッチャー時代を過ぎても「ゆりかごから墓場まで」の福祉の精神は脈々と受け継がれているのだ。

 もちろん、ムーア監督は、巧みに事実を隠している。欧州各国は十分な福祉を受けるかわりに、高い消費税(物品税)率を払っている。キューバは手厚い医療だが、社会主義国ゆえの自由のない社会と所得の低さがある。本来のドキュメンタリーならこの辺りの事実もしっかりと組み込むはずだが、ムーア監督はそんなことしない。みんな分かっていることだ、とわずかも伝えない。

 アメリカは医療選択の自由度が高い。保険の種類も自分ですべて選ぶ。銃の所有においても、「自由」が優先される。ただし、金持ちになる自由もあれば、貧困の自由もあるのだ。それをどう考えるか。ムーア監督の問題提起なのだ。そして、彼の主張はハッキリしている。善意のある一般庶民が苦しむ施策は間違っているんだ、と。医療制度は、自由に頼るのではなく、国家の責任だと。健康保険制度が必要なのだと。
 タイトルのsickoは俗語で「変質者、変態」。映画の内容に合わせれば、映画チラシにあるように、「ビョーキ」(漢字の病気、じゃなく、カタカナで書いた方が雰囲気が出る)。医療制度に関して、今の状態はアメリカ自身「ビョーキ」になっている、とうことなのだろう。

 翻って、日本。医療制度に関しては、アメリカに倣おうとする政府の魂胆がアリアリとしている。鳴り物入りで始まった介護保険制度。知らぬ間に始まった後期高齢者医療制度。何のことはない、必要な介護や医療が以前よりも十分受けられなくなってきている。その中で消費税アップの話題。そして、貧富の差の拡大。このままでは、消費税は欧州並、医療はアメリカ並、そして国民のおかれた立場はキューバ並、になってしまうのではないか。

 この映画は、アメリカ人に向けたムーア監督の異議申し立てであるが、日本人にとっても考えさせられる内容であるのだ。

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